すいすい通信 vol.166 2025年1月号
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★☆
☆ すいすい通信 ☆ vol.166 2025年1月8日配信
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★☆
こんにちは。リーゾの門奈です。
2025年最初のの「すいすい通信」をお届けいたします。
_/_/_/_/ I N D E X _/_/_/_/_/_/_/_/_//_/_/_/_/_/_/_/
・特集・・・・・・・・・・・・・・フラグメント解析代行
・零細起業のあれこれ・・・・・・・ビジネスとしての介護
・コーヒーブレイク・・・・・・・・ネイチャーポジティブ
・リーゾからのお知らせ
■ 特 集 ━━━━━━━・・・・‥‥‥………………………
フラグメント解析代行
「フラグメント解析」というのは、
個体・系統・品種間等の塩基配列のわずかな違いを利用して、
遺伝子型のタイピングを行う方法のひとつです。
ゲノム塩基配列上に、繰り返し配列(例えばGAGAGA…)の、
繰り返し回数の違い(例えば10回と11回)があるとして、
わずか2塩基の長さの違いは、
アガロースゲル電気泳動の解像度では識別できません。
そういう場合に使うのが、フラグメント解析です。
フラグメント解析では、「キャピラリ電気泳動」を使います。
キャピラリ(極細のガラス管)に詰めた
アクリルアミドゲル中でDNAを電気泳動します。
アクリルアミドゲルはアガロースよりはるかに分離能が高く、
1塩基の長さの違いでもくっきり区別できます。
予め蛍光修飾したプライマーでPCRかけておくことで、
DNA断片が蛍光を発するしくみになっていて、
キャピラリの出口付近でレーザー光を当ててスキャンして、
通過していくDNA量を蛍光強度として検出していきます。
蛍光修飾の種類を変えることで、
最大4つの断片を同時解析することも可能なんですよ。
そんな便利な手法なのですが、問題は、解析装置がお高いこと。
なので長年「リーゾでは無理な手法」と思っていました。
そんな中、お客様から「PCRと電気泳動」のご依頼があり、
詳細なプロトコルを伺うと、実は内容はフラグメント解析。
これはお断りするしかないか・・・と一瞬思ったのですが、
実はいつもシーケンシングを頼んでいる会社にて、
フラグメント解析も頼めることがわかりました。
・・・ということは、リーゾでもできるはず!
初の試みで不安もありましたが、
できますとお答えして見積を出し、
蛍光プライマーとDNAをお預かりして実験を行い、
無事に結果を納品できました。
『そのくらい自分でやれる』という研究者さんが
大勢いらっしゃることはわかっていますが、
いろいろな理由で『代わりにやって欲しい』という需要も
確かにあるんです。
そんな研究者さんのご事情と熱意を汲み取って、
分析専門の業者との間に入って実験結果を出せるのは、
リーゾくらいしかないでしょう(たぶん)。
実は、野菜や果実の品種識別法として、
フラグメント解析を利用する系が多く開発されています。
これまでは、リーゾではできない、と諦めていましたが、
フラグメント解析を使った各種鑑定サービスの拡充も、
できる可能性が見えてきました。
これは逆に、開発側の研究者さんから、
『フラグメント解析を使った鑑別法を社会実装して欲しい』
というお申し出にも、お応えできることを意味しています。
というわけで、フラグメント解析、これからは対応歓迎です。
それ以外にも、お困りごとはとりあえず投げてくだされば、
リーゾでできるかどうか、全力で検討します。
「研究業界の雑用係」を自認するリーゾ、
本年も、どうぞお気軽に、ご相談ください。
■ 零細起業のあれこれ ━━━━━・・・・・・・‥‥………
ビジネスとしての介護
起業を志す研究者さんに、リーゾの経験をお伝えしています。
今回は番外編で、「ビジネスとしての介護」について
介護のプロである母のケアマネさんに、
根掘り葉掘り聞いたことをシェアしたいと思います。
母の診察を待つ間の半端な待ち時間があったので、
雑談の流れから、プチインタビューをしてみました。
『介護施設はビジネスとして儲かるの?』
と直球で質問したところ、答えは、
『介護だけ、だと微妙ですね』。
介護施設の売上は、「介護報酬」×「定員」ですが、
「介護報酬」にも、施設の定員にも上限があるので、
売上の上限も、おのずから決まってしまうためです。
介護には設備とマンパワーが必須なので、
家賃と人件費が、固定費として毎月かかります。
水道光熱費や消耗品費などその他の経費を引くと、
定員かそれに近い入居者がいれば利益が出るものの、
かなりカツカツだそう。
入所者が入院するなどでベッドが空いてしまうと、
その間の介護報酬はゼロになりますが、
かといって新たな入所者を入れるわけにもいかないし、
スタッフを減らすわけにもいかないしで、
そうなると簡単に赤字転落です。
というわけで、『あまり儲からない』そうです。
ではなぜ、パナソニック、ソニー、NTT、イオン、など、
別業種の大企業が次々と介護事業に
参入しているのでしょうか?
実は、介護事業における儲けの源泉は、別にあるそうです。
それは・・・「医療費」。
介護施設にはたいがい「看護ステーション」が併設されていて、
そこから看護師が「訪問看護」に来るシステムができています。
1回30分ほどの「看護」をすると点数がつき、
医療費が請求できます。
介護費用と違い、医療費には上限がないため、
やりようでいくらでも儲けられるといいます。
そういえば、訪問看護とは名ばかり、
看護師さんがドアを開けて顔を見るだけで、
生存確認程度しかしていないのに、
しっかり医療費を請求していた悪徳介護施設が
摘発されたというニュースもありましたよね・・・。
医療費の出所は、我々が支払う健康保険料ですから、
そこはちゃんと摘発して欲しい
(というかちゃんと必要な看護をして欲しい!)、
と思います。
意外な利益の源泉が分かったところで、
入居者集めのための宣伝活動はどうしているのか?
も聞いてみました。
ネットで介護施設を探そうとすると出てくる、
「みんなの介護」などのポータルサイトがあります。
このようなポータルサイトに登録するのが一般的だそうです。
ちなみにこういうサイトや紹介業者経由で
施設に問い合わせた客が入所に至ると、
入居費用1~2ヶ月分の紹介手数料を
施設が支払うという仕組みになっています。
つまり、高額な施設に決まる方が儲かるので、
どういう施設が「おすすめ」されるのかは、
容易に想像がつきますよね。
思い返せば、母の入居先を探す際に相談した業者が、
不便な立地の高額な施設ばかりを勧めてきたのは、
そういうことだったのか・・・と、今はわかります
(なので、結局自力で探しました)。
ほかには、「要支援」の人をサポートする機関である
「地域包括支援センター」から、
「要介護」に進む人を紹介してもらうこともあるため、
普段から連携しておくそうです。
ちなみに私の母の場合のように、
他のケアマネさんから引き継ぐのはレアケース。
ケアマネは施設所属のことが多く、
普通はお客さんをよそに取られるようなことはしたがりません。
よいケアマネさんで、幸運でした。
介護福祉士(ヘルパー)から試験を受けてケアマネへ、
さらにその上の「主任ケアマネ」になると、
自分で介護施設を「起業」することもできるようになるそう。
でも話を聞く限り、相当の資本力が要りそうですし、
成功するには並々ならぬ人間力も必要になるように思います。
件のケアマネさんは、
管理職よりも現場でお世話する方が好きなんだそうで、
起業する気はまったくないようです。
我々自身もいずれお世話になるときが来る介護業界の裏側、
知っておいて損はないと思い、シェアさせていただきました。
■ コーヒーブレイク━━━━━・・・・・‥‥‥…‥…‥…
ネイチャーポジティブ
先日、環境DNA学会に企業展示をさせていただいた際、
隣のブースが商社さんで、ポスターに
「ネイチャーポジティブ」と大きく書いてありました。
商社が学会にブースを出すくらいなので、
大きなビジネスチャンスが潜んでいるのかも?と、
ちょっと勉強してみました。
まずネイチャーポジティブとは、ざっくり言いますと、
『自然生態系の損失を食い止め、回復させていくこと』
を意味しています。
社会・経済活動は、それ自体、生物多様性や自然資本に対して
長年にわたり、負の影響を与えてきましたが、
これからは負の影響をできる限り抑えるだけでなく、
自然に対して「プラスの影響を与えること」を
目指していかねばなりません。
よく聞く「カーボンニュートラル」は、
「CO2の収支をゼロにしよう」という意味で、
「ニュートラル」なわけなんですが、
ゼロではなくプラスにしたいという願望を込めて、
ネイチャー「ポジティブ」という呼び方になっています。
ネイチャーポジティブに関する議論が始まったのは2019年。
2021年には、12の民間企業や自然保護団体のCEOが共同で
ネイチャーポジティブの達成を目指す必要性について、
科学的エビデンスをもとに主張する
「A Nature-Positive World: The Global Goal for Nature」
という文章を公表しました。
その後、G7サミットやCOP15などの会議でも
国際目標として採用され、
2030年までに陸地と海域の30%以上を保全する
「30by30(サーティーバイサーティ)」が、
世界共通の目標として浸透しつつあります。
世界では、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)
というものができていますし、
日本でも、ネイチャーポジティブ経済研究会なるものを
環境省が設置していて、
産学官が連携して、いろいろ議論して、
日本としての戦略策定、企業向けの解説資料の作成、
取り組みの国際発信・・・
などを実施していく予定らしいです。
さてここで冒頭の疑問、
『ネイチャーポジティブはビジネスチャンスなのか?』
です。
ネイチャーポジティブへの貢献が無視できない
世の中になってくると、事業者としては、
「しっかり取り組んでますアピール」
が必要になります。
となると、何にどう取り組んで
どのようなの成果を出しているのかを、
明文化、数値化する必要が出てきます。
となると、何かしらの認証を出すような
オーソリティーが要るわけで、
検査や認証自体はもちろん、
その獲得に至るまでのコンサルなども、
大きなビジネスになっていきそうです。
現状、企業に求められているのは、
事業活動の自然資本への影響と依存の両側面を把握したうえで、
「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」
について開示すること、です(まだ「義務」ではない)。
この段階から、「どうしたらいいか相談に乗って!」
という需要はありそうですから、
コンサル業にとっては、垂涎のチャンスではないかと思います。
大企業には大きな目標を掲げてがんばっていただくとして、
リーゾのような小さな事業者にも、
何かネイチャーポジティブなことを
やれないものかな・・・と考えています。
一例として、人工芝が敷いてあった空き地を麦畑に変えて、
取れた麦でクラフトビールを作っている会社があるそうで、
元空き地が畑になったことで、動物や植物の種類が増えて、
それが生物多様性への貢献度としてカウントされています。
小さな会社でも、いろいろ考えられそうです。
件の商社さんのブース出展の目的は、
環境関連研究の研究者さんとのつながりを獲得すること。
ネイチャーポジティブな姿勢をアピールするために、
環境研究に出資したい企業との間を取り持つだけでも、
ちょっとした商売になるのかも・・・?
なんて、下世話なことを考えてしまいました。
それはともかく、
「ネイチャーポジティブ」
「30by30」
は、これからよく耳にする言葉となりそうですので、
ぜひご記憶いただけたらと思います。
ネイチャーポジティブと、30by30については、
こちらのサイトが参考になるかと思います。
30by30アライアンス(環境省)
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
■ リーゾからのお知らせ ━━━━━・・・・・・・‥‥……
〇交配袋のご注文について
年度末の繁忙期となっております。
受注生産となる「特注品」をご注文いただく場合には、
年度内の納品が可能かどうか、
ご注文の前に軽く打診をいただけると助かります。
なお、定番品については、多めに在庫を確保しており、
比較的スムーズに納品できる見込みです。
※原則受注生産の「種子袋」も、3000枚ほど作ってあります。
交配袋の情報はこちらです
https://rizo.co.jp/crossingbag.html
〇実験補助セミナー 開講中
文系でも未経験でも大丈夫!
子育て中のお母さんでも働きやすい、
研究機関での実験補助のお仕事の基礎を教える、
主に女性向けのセミナー。
お仕事紹介や就職活動の支援つきです。
第3水曜日の10時~11時半、定員4名。
全8回シリーズです(単発受講可)。
次回は1月22日、
「PCR」
を行います(満席)。
詳細はこちらです。
https://rizo.co.jp/seminer.html
○ミニアクアリウム自作キット販売中
「リーゾのミニアクアリウムを自作できるキット」の
通販を始めました。
容器、機能性ソイル、牡蠣殻、水草、取説が入っています。
生体については、安全に輸送することが難しいので、
お近くのペットショップなどでご購入いただく形になります。
(水草だけでも、お楽しみいただけます)
販売ページ(アマゾン)はこちら
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DR2HC6YY
ミニアクアリウムの紹介ページはこちら
https://rizo.co.jp/miniaquarium.html
■ 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━・・・・‥‥‥…
○先月はリーゾ始まって以来初めての学会企業展示に挑戦!
研究関連商品とサービスのポスターとチラシに加え、
試薬と交配袋の実物を少しだけ展示してみました。
環境つながりとこじつけて展示したミニアクアリウムが、
会話のきっかけになったりして、意外と役に立ちました。
○9学年差で生まれた2児の、長い長い子育てを卒業し、
再び夫婦ふたりの生活に戻るまで、
あと3カ月となりました(順当にいけばですが)。
喪失感も相当あるでしょうが、解放感もありそうで、
人生の新たなステージの幕開けに胸躍る新年です。
○今年もリーゾからの賀状は控え、
すいすい通信で新年のご挨拶に代えさせていただきます。
本年も、スタッフ一同協力しあって
微力ながらお役に立てるよう努めて参ります。
○最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからもリーゾとすいすい通信を
どうぞよろしくお願いいたします。
すいすい通信は、「株式会社リーゾ」のお客様、
および関係者の皆様にお送りしています。
お知り合いで、「すいすい通信」の配信を
承認していただける方がいらっしゃいましたら、
ぜひご紹介くださいますよう、お願いいたします。
配信登録はこちらからできます。
http://rizo.sakura.ne.jp/vd/entry/e/bS8PtaC5kPRXp3iy/
-----------------------------------------------------------
【すいすい通信】
発 行 日:月1回・第1水曜日(予定)
発行開始日:2011年4月7日
ご意見ご感想、および本メールマガジンの解除はこちらまで
info(at)rizo.co.jp
【発行元】
株式会社リーゾ
〒305-0005 茨城県つくば市天久保2-9-5-A03
TEL:029-852-9351 FAX:029-898-9161
MAIL:info(at)rizo.co.jp
HP:http://www.rizo.co.jp/
※本メールは「MSゴシック」などの等幅フォントで
最適に表示されます。
===========================================================
Copyright(C) Rizo Inc. All rights reserved.
☆ すいすい通信 ☆ vol.166 2025年1月8日配信
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★☆
こんにちは。リーゾの門奈です。
2025年最初のの「すいすい通信」をお届けいたします。
_/_/_/_/ I N D E X _/_/_/_/_/_/_/_/_//_/_/_/_/_/_/_/
・特集・・・・・・・・・・・・・・フラグメント解析代行
・零細起業のあれこれ・・・・・・・ビジネスとしての介護
・コーヒーブレイク・・・・・・・・ネイチャーポジティブ
・リーゾからのお知らせ
■ 特 集 ━━━━━━━・・・・‥‥‥………………………
フラグメント解析代行
「フラグメント解析」というのは、
個体・系統・品種間等の塩基配列のわずかな違いを利用して、
遺伝子型のタイピングを行う方法のひとつです。
ゲノム塩基配列上に、繰り返し配列(例えばGAGAGA…)の、
繰り返し回数の違い(例えば10回と11回)があるとして、
わずか2塩基の長さの違いは、
アガロースゲル電気泳動の解像度では識別できません。
そういう場合に使うのが、フラグメント解析です。
フラグメント解析では、「キャピラリ電気泳動」を使います。
キャピラリ(極細のガラス管)に詰めた
アクリルアミドゲル中でDNAを電気泳動します。
アクリルアミドゲルはアガロースよりはるかに分離能が高く、
1塩基の長さの違いでもくっきり区別できます。
予め蛍光修飾したプライマーでPCRかけておくことで、
DNA断片が蛍光を発するしくみになっていて、
キャピラリの出口付近でレーザー光を当ててスキャンして、
通過していくDNA量を蛍光強度として検出していきます。
蛍光修飾の種類を変えることで、
最大4つの断片を同時解析することも可能なんですよ。
そんな便利な手法なのですが、問題は、解析装置がお高いこと。
なので長年「リーゾでは無理な手法」と思っていました。
そんな中、お客様から「PCRと電気泳動」のご依頼があり、
詳細なプロトコルを伺うと、実は内容はフラグメント解析。
これはお断りするしかないか・・・と一瞬思ったのですが、
実はいつもシーケンシングを頼んでいる会社にて、
フラグメント解析も頼めることがわかりました。
・・・ということは、リーゾでもできるはず!
初の試みで不安もありましたが、
できますとお答えして見積を出し、
蛍光プライマーとDNAをお預かりして実験を行い、
無事に結果を納品できました。
『そのくらい自分でやれる』という研究者さんが
大勢いらっしゃることはわかっていますが、
いろいろな理由で『代わりにやって欲しい』という需要も
確かにあるんです。
そんな研究者さんのご事情と熱意を汲み取って、
分析専門の業者との間に入って実験結果を出せるのは、
リーゾくらいしかないでしょう(たぶん)。
実は、野菜や果実の品種識別法として、
フラグメント解析を利用する系が多く開発されています。
これまでは、リーゾではできない、と諦めていましたが、
フラグメント解析を使った各種鑑定サービスの拡充も、
できる可能性が見えてきました。
これは逆に、開発側の研究者さんから、
『フラグメント解析を使った鑑別法を社会実装して欲しい』
というお申し出にも、お応えできることを意味しています。
というわけで、フラグメント解析、これからは対応歓迎です。
それ以外にも、お困りごとはとりあえず投げてくだされば、
リーゾでできるかどうか、全力で検討します。
「研究業界の雑用係」を自認するリーゾ、
本年も、どうぞお気軽に、ご相談ください。
■ 零細起業のあれこれ ━━━━━・・・・・・・‥‥………
ビジネスとしての介護
起業を志す研究者さんに、リーゾの経験をお伝えしています。
今回は番外編で、「ビジネスとしての介護」について
介護のプロである母のケアマネさんに、
根掘り葉掘り聞いたことをシェアしたいと思います。
母の診察を待つ間の半端な待ち時間があったので、
雑談の流れから、プチインタビューをしてみました。
『介護施設はビジネスとして儲かるの?』
と直球で質問したところ、答えは、
『介護だけ、だと微妙ですね』。
介護施設の売上は、「介護報酬」×「定員」ですが、
「介護報酬」にも、施設の定員にも上限があるので、
売上の上限も、おのずから決まってしまうためです。
介護には設備とマンパワーが必須なので、
家賃と人件費が、固定費として毎月かかります。
水道光熱費や消耗品費などその他の経費を引くと、
定員かそれに近い入居者がいれば利益が出るものの、
かなりカツカツだそう。
入所者が入院するなどでベッドが空いてしまうと、
その間の介護報酬はゼロになりますが、
かといって新たな入所者を入れるわけにもいかないし、
スタッフを減らすわけにもいかないしで、
そうなると簡単に赤字転落です。
というわけで、『あまり儲からない』そうです。
ではなぜ、パナソニック、ソニー、NTT、イオン、など、
別業種の大企業が次々と介護事業に
参入しているのでしょうか?
実は、介護事業における儲けの源泉は、別にあるそうです。
それは・・・「医療費」。
介護施設にはたいがい「看護ステーション」が併設されていて、
そこから看護師が「訪問看護」に来るシステムができています。
1回30分ほどの「看護」をすると点数がつき、
医療費が請求できます。
介護費用と違い、医療費には上限がないため、
やりようでいくらでも儲けられるといいます。
そういえば、訪問看護とは名ばかり、
看護師さんがドアを開けて顔を見るだけで、
生存確認程度しかしていないのに、
しっかり医療費を請求していた悪徳介護施設が
摘発されたというニュースもありましたよね・・・。
医療費の出所は、我々が支払う健康保険料ですから、
そこはちゃんと摘発して欲しい
(というかちゃんと必要な看護をして欲しい!)、
と思います。
意外な利益の源泉が分かったところで、
入居者集めのための宣伝活動はどうしているのか?
も聞いてみました。
ネットで介護施設を探そうとすると出てくる、
「みんなの介護」などのポータルサイトがあります。
このようなポータルサイトに登録するのが一般的だそうです。
ちなみにこういうサイトや紹介業者経由で
施設に問い合わせた客が入所に至ると、
入居費用1~2ヶ月分の紹介手数料を
施設が支払うという仕組みになっています。
つまり、高額な施設に決まる方が儲かるので、
どういう施設が「おすすめ」されるのかは、
容易に想像がつきますよね。
思い返せば、母の入居先を探す際に相談した業者が、
不便な立地の高額な施設ばかりを勧めてきたのは、
そういうことだったのか・・・と、今はわかります
(なので、結局自力で探しました)。
ほかには、「要支援」の人をサポートする機関である
「地域包括支援センター」から、
「要介護」に進む人を紹介してもらうこともあるため、
普段から連携しておくそうです。
ちなみに私の母の場合のように、
他のケアマネさんから引き継ぐのはレアケース。
ケアマネは施設所属のことが多く、
普通はお客さんをよそに取られるようなことはしたがりません。
よいケアマネさんで、幸運でした。
介護福祉士(ヘルパー)から試験を受けてケアマネへ、
さらにその上の「主任ケアマネ」になると、
自分で介護施設を「起業」することもできるようになるそう。
でも話を聞く限り、相当の資本力が要りそうですし、
成功するには並々ならぬ人間力も必要になるように思います。
件のケアマネさんは、
管理職よりも現場でお世話する方が好きなんだそうで、
起業する気はまったくないようです。
我々自身もいずれお世話になるときが来る介護業界の裏側、
知っておいて損はないと思い、シェアさせていただきました。
■ コーヒーブレイク━━━━━・・・・・‥‥‥…‥…‥…
ネイチャーポジティブ
先日、環境DNA学会に企業展示をさせていただいた際、
隣のブースが商社さんで、ポスターに
「ネイチャーポジティブ」と大きく書いてありました。
商社が学会にブースを出すくらいなので、
大きなビジネスチャンスが潜んでいるのかも?と、
ちょっと勉強してみました。
まずネイチャーポジティブとは、ざっくり言いますと、
『自然生態系の損失を食い止め、回復させていくこと』
を意味しています。
社会・経済活動は、それ自体、生物多様性や自然資本に対して
長年にわたり、負の影響を与えてきましたが、
これからは負の影響をできる限り抑えるだけでなく、
自然に対して「プラスの影響を与えること」を
目指していかねばなりません。
よく聞く「カーボンニュートラル」は、
「CO2の収支をゼロにしよう」という意味で、
「ニュートラル」なわけなんですが、
ゼロではなくプラスにしたいという願望を込めて、
ネイチャー「ポジティブ」という呼び方になっています。
ネイチャーポジティブに関する議論が始まったのは2019年。
2021年には、12の民間企業や自然保護団体のCEOが共同で
ネイチャーポジティブの達成を目指す必要性について、
科学的エビデンスをもとに主張する
「A Nature-Positive World: The Global Goal for Nature」
という文章を公表しました。
その後、G7サミットやCOP15などの会議でも
国際目標として採用され、
2030年までに陸地と海域の30%以上を保全する
「30by30(サーティーバイサーティ)」が、
世界共通の目標として浸透しつつあります。
世界では、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)
というものができていますし、
日本でも、ネイチャーポジティブ経済研究会なるものを
環境省が設置していて、
産学官が連携して、いろいろ議論して、
日本としての戦略策定、企業向けの解説資料の作成、
取り組みの国際発信・・・
などを実施していく予定らしいです。
さてここで冒頭の疑問、
『ネイチャーポジティブはビジネスチャンスなのか?』
です。
ネイチャーポジティブへの貢献が無視できない
世の中になってくると、事業者としては、
「しっかり取り組んでますアピール」
が必要になります。
となると、何にどう取り組んで
どのようなの成果を出しているのかを、
明文化、数値化する必要が出てきます。
となると、何かしらの認証を出すような
オーソリティーが要るわけで、
検査や認証自体はもちろん、
その獲得に至るまでのコンサルなども、
大きなビジネスになっていきそうです。
現状、企業に求められているのは、
事業活動の自然資本への影響と依存の両側面を把握したうえで、
「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」
について開示すること、です(まだ「義務」ではない)。
この段階から、「どうしたらいいか相談に乗って!」
という需要はありそうですから、
コンサル業にとっては、垂涎のチャンスではないかと思います。
大企業には大きな目標を掲げてがんばっていただくとして、
リーゾのような小さな事業者にも、
何かネイチャーポジティブなことを
やれないものかな・・・と考えています。
一例として、人工芝が敷いてあった空き地を麦畑に変えて、
取れた麦でクラフトビールを作っている会社があるそうで、
元空き地が畑になったことで、動物や植物の種類が増えて、
それが生物多様性への貢献度としてカウントされています。
小さな会社でも、いろいろ考えられそうです。
件の商社さんのブース出展の目的は、
環境関連研究の研究者さんとのつながりを獲得すること。
ネイチャーポジティブな姿勢をアピールするために、
環境研究に出資したい企業との間を取り持つだけでも、
ちょっとした商売になるのかも・・・?
なんて、下世話なことを考えてしまいました。
それはともかく、
「ネイチャーポジティブ」
「30by30」
は、これからよく耳にする言葉となりそうですので、
ぜひご記憶いただけたらと思います。
ネイチャーポジティブと、30by30については、
こちらのサイトが参考になるかと思います。
30by30アライアンス(環境省)
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
■ リーゾからのお知らせ ━━━━━・・・・・・・‥‥……
〇交配袋のご注文について
年度末の繁忙期となっております。
受注生産となる「特注品」をご注文いただく場合には、
年度内の納品が可能かどうか、
ご注文の前に軽く打診をいただけると助かります。
なお、定番品については、多めに在庫を確保しており、
比較的スムーズに納品できる見込みです。
※原則受注生産の「種子袋」も、3000枚ほど作ってあります。
交配袋の情報はこちらです
https://rizo.co.jp/crossingbag.html
〇実験補助セミナー 開講中
文系でも未経験でも大丈夫!
子育て中のお母さんでも働きやすい、
研究機関での実験補助のお仕事の基礎を教える、
主に女性向けのセミナー。
お仕事紹介や就職活動の支援つきです。
第3水曜日の10時~11時半、定員4名。
全8回シリーズです(単発受講可)。
次回は1月22日、
「PCR」
を行います(満席)。
詳細はこちらです。
https://rizo.co.jp/seminer.html
○ミニアクアリウム自作キット販売中
「リーゾのミニアクアリウムを自作できるキット」の
通販を始めました。
容器、機能性ソイル、牡蠣殻、水草、取説が入っています。
生体については、安全に輸送することが難しいので、
お近くのペットショップなどでご購入いただく形になります。
(水草だけでも、お楽しみいただけます)
販売ページ(アマゾン)はこちら
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DR2HC6YY
ミニアクアリウムの紹介ページはこちら
https://rizo.co.jp/miniaquarium.html
■ 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━・・・・‥‥‥…
○先月はリーゾ始まって以来初めての学会企業展示に挑戦!
研究関連商品とサービスのポスターとチラシに加え、
試薬と交配袋の実物を少しだけ展示してみました。
環境つながりとこじつけて展示したミニアクアリウムが、
会話のきっかけになったりして、意外と役に立ちました。
○9学年差で生まれた2児の、長い長い子育てを卒業し、
再び夫婦ふたりの生活に戻るまで、
あと3カ月となりました(順当にいけばですが)。
喪失感も相当あるでしょうが、解放感もありそうで、
人生の新たなステージの幕開けに胸躍る新年です。
○今年もリーゾからの賀状は控え、
すいすい通信で新年のご挨拶に代えさせていただきます。
本年も、スタッフ一同協力しあって
微力ながらお役に立てるよう努めて参ります。
○最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからもリーゾとすいすい通信を
どうぞよろしくお願いいたします。
すいすい通信は、「株式会社リーゾ」のお客様、
および関係者の皆様にお送りしています。
お知り合いで、「すいすい通信」の配信を
承認していただける方がいらっしゃいましたら、
ぜひご紹介くださいますよう、お願いいたします。
配信登録はこちらからできます。
http://rizo.sakura.ne.jp/vd/entry/e/bS8PtaC5kPRXp3iy/
-----------------------------------------------------------
【すいすい通信】
発 行 日:月1回・第1水曜日(予定)
発行開始日:2011年4月7日
ご意見ご感想、および本メールマガジンの解除はこちらまで
info(at)rizo.co.jp
【発行元】
株式会社リーゾ
〒305-0005 茨城県つくば市天久保2-9-5-A03
TEL:029-852-9351 FAX:029-898-9161
MAIL:info(at)rizo.co.jp
HP:http://www.rizo.co.jp/
※本メールは「MSゴシック」などの等幅フォントで
最適に表示されます。
===========================================================
Copyright(C) Rizo Inc. All rights reserved.