すいすい通信 vol.85 2018年4月号
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☆ すいすい通信 ☆ vol.85 2018年4月4日配信
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こんにちは。リーゾの門奈です。
東京で雪が降った8日後に桜が満開の真夏日になった先週。なかな
か身体がついていかず年齢を感じます・・・が、新年度は気持ちよ
くスタートしたいです。
それでは、今月の「すいすい通信」をお届けします!
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・特集・・・・・・・・・・・・・・・イグサ(畳表)のDNA鑑定
・零細起業の経営実務・・・・・・・・・・「試食」の販促効果
・実験補助者への道 ・・・・・・・・・・・正確なデータを取る
・リーゾからのお知らせ
■ 特 集 ━━━━━━━・・・・‥‥‥……
イグサ(畳表)のDNA鑑定
今年も春がやってきました。
この季節になると、量販店さんから、輸入予定のイグサ製のラグ
(じゅうたん)が大丈夫かどうかという、DNA検査のご依頼がやっ
てきます。
イグサのラグというと夏!というイメージだと思いますが、リー
ゾでは、イグサラグの到着は例年、春のたよりです。
大丈夫かどうか、というのは何かと言いますと、材料として使われ
ているイグサが、「ひのみどり」という品種でなければ輸入しても
問題ないので、そこを確認しています。
ではなぜ「ひのみどり」はいけないのかと言いますと、「ひのみど
り」は日本のイグサ産地筆頭である熊本県が育成し、種苗権を保有
する優良品種であるからです。
海外で安く栽培されたものが国内で販売されると、熊本のイグサ農
家さんが成り立たなくなり、ひいては日本の畳文化の存続の危機と
いう事態に陥りかねません。
このため、ひのみどりの輸入は法律で禁止されています。
ということで、海外から「ひのみどり」を使った製品をうっかり輸
入して罰せられることがないように、慎重な会社は輸入の前にサン
プル品を取り寄せて検査依頼されるようです。
鑑定は、DNA上の繰り返し配列の数の違いを検出して、「ひのみど
り」とそれ以外の品種を区別します。具体的には、ラグから10本
のイグサ茎をランダムに取り出して独立にDNAを抽出し、PCRをかけ
て電気泳動して判定します。
・・・と書くと簡単そうですが、これが結構、ハードル高いんです。
まずひのみどり以外のイグサ品種は、イネの品種とは違い、染色体
が「ヘテロ」。ひのみどりは、固定された品種なので「ホモ」。
繰り返し配列の差は、増幅されたDNA断片の長さの差となって現れ
ますが、非ひのみどりはごくわずかな差で2本出て、ひのみどりは
そのうちの1本だけが出る、という違いにしかなりません。
つまり、限界まで固い(解像度が高い)ゲルを使って、長めに泳動
して、やっと判定可能なレベルの小さな差を検出しなくてはならな
いんです・・・。
なかなか手間と集中力の要る実験ですが、ゲノム上の違いを探すの
はそれだけ難しかったということだと思います。この手法を開発さ
れた農研機構の研究者さんのご苦労がしのばれます。
もともと、種苗管理センターで行われていた検査なのですが、摘発
の報道を背景に依頼が急増して受けられなくなり、どこか民間でや
ってもらえないか・・・ということでリーゾが提供することになり
ました。
種苗管理センター時代には、権利侵害が疑われる場合に徹底的に調
べる鑑定だけでしたが、リーゾが始めるにあたり、ひのみどりでは
ないことを低コストで確認する「ライトコース」(15,000円+税)
を追加しました。
もちろん徹底的な鑑定も「レギュラーコース」(30,000円+税)と
して提供しています。
その後、摘発がニュースになることもなく、検査依頼も落ち着いて
います。今後も、ご依頼ごとにきっちりと検査して、お客様の安全
なビジネスとひのみどりの権利保護に貢献できればと思っています。
イグサDNA検査サービスについての詳細は、こちらをご覧ください。
http://www.rizo.co.jp/igusa-DNAkantei.html#ap_137
■ 零細起業の経営実務 ━━━━━・・・・・・・‥‥………
「試食」の販促効果
起業を志す研究者さんに、リーゾの経験をお伝えしているシリー
ズ。農学研究なら出口が食品になることも多いはず。今回は、試
食が販促にどのように有効なのか、を考えます。
念願の「美食同玄米」を商品化したものの、試薬と同じように、
ウェブサイトに出しても、アマゾンに出してもぜんぜん売れず、
落ちこんだ時期がありました。
なぜ売れないんだろう?と考えた結果、そもそもリーゾのサイト
を見るのはお仕事モードの研究者さんで、食品を買いに来たお客
様ではないことに気づきました。
そこで、こだわりの食品を探すモードのお客様の目に留まるよう、
イオンモールつくばの農産物直売所「えるふ農国」に置いていた
だくことにしたのですが、社長に「そんなもん売れねえよ」と言
われてしまいます。
見た目は変わったお米だけど、食べていただければ良さがわかる
はず。だったらとにかく食べてもらおうと、一念発起。お百度参
りのつもりで、毎週土日×1年間、小さな玄米おにぎりをたくさ
ん作って試食提供すると決め、やり通しました。
もちろんいきなり売れるようにはなりませんでしたが、1年経つ
頃にはリピーターのお客様もつき、完売して次作分の予約が入る
までになり、今に至っています。
ここまでのお話は、すでに知っている方も多いと思います。
最近の試食提供では、ふつうの美食同玄米おにぎり、しょうゆ味
の美食同玄米焼きおにぎり、そして美食同玄米甘酒と、「複数種
類食べてもらう」という新たな試みを行っています。
3種類出すと、たいていのお客様は3つとも召し上がりますから、
試食人数は1種類のときとほとんど変わりません。
でも、販促効果は、1種類のときより明らかに大きいと感じてい
ます。
それはなぜなんでしょうか?
まず、複数種類を試食すると、商品への接触時間が長くなること
は確かです。もぐもぐしながら、POPやリーフレットを読んだり、
販売員の説明を聞いたりして商品知識が深まり、親しみがわく、
という効果が期待できます。
もうひとつは、たくさん食べたことで、「ひとつくらい買わない
と悪いかな」という気持ちになることが考えられます(これを、
「報恩の心理」と言うそうです)。つまり、試食前の選択肢は
「買う/買わない」だったのにいつのまにか「どれを買うか」に
切り替わるということです。
自分がお客さんだとしたら、買うか買わないかと考えるより、買
うならどれがいいかしらと考える方が、絶対に楽しいですし、販
売員さんとの会話も弾み、いいお買い物ができますよね。
これで思いあたるのは、ある物販イベントで隣になったお菓子や
さんで、通りかかるお客様を呼び止めては、いろいろなフレーバ
ーのシフォンケーキを、「こっちの味も食べてみて!」とどんど
ん試食させちゃうんです。
試食だけで満足されちゃうのでは・・・と心配になりましたが、
試食されたお客様は、かなりの割合で、「これとこれ。あ、これ
もお願い」という感じで、複数個をお買い求めになってました。
通りかかる前は、たぶん、買うつもりはなかったはずなのに、す
ごい!です。意識してやってらっしゃるのかどうかはわかりませ
んが、試食中にお客様の選択モードが切り替わるのを実感しまし
た。
試食ひとつでも、学ぶところは多々あり、商売の道は奥が深い。
修業はまだまだ続きそうです!
ちなみに、しょうゆ味の焼きおにぎりは、スキレット&魚焼きグ
リルを使うと、ひっくり返し要らずで簡単に作れます。冷めると
濡れせんべいチックな歯ごたえと味で、おやつにも酒のつまみに
も好適。あとひく味です。
甘酒は、商品ではないですが、わけありの美食同玄米と麹で作る
レシピを提案して販売しており、大好評!です。
(下記、「お知らせ」をご参照ください)
■ 実験補助者への道 ━━━━━━━・・・・・‥‥‥………
正確なデータを取る
実験補助の仕事の中には、いろいろな測定を行ってデータを取る、
というものがあります。
私がなじみのある農学関係では、例えば植物体のいろいろな部位
の長さや大きさ、重さを計測したり、圃場(田んぼや畑)で観察
して花が咲いた日を記録したり、ほんとうに様々なデータ取りの
仕事が生じます。
そこで今回は、正確なデータを取るために、ベテラン実験補助者
さんはどうしているのか?どうしたら研究者さんに信頼してもら
えるデータを取れるのか?をお話ししたいと思います。
実は、データ取りは、始める「前」が肝腎!です。
研究者さんにデータ取りを頼まれたら、まず「測定の対象」と
「測定方法」を確認します(例えば、イネの穂の長さを、ものさ
しで測る、など)。
サンプルのサイズ(大きさや長さ)を測るには、ものさし、メジ
ャー、ノギスなど、重さを測るには、デジタル天秤、精密天秤な
どを使うことになりますが、研究室に計測機器や器具が複数ある
場合、できれば「これを使って」と決めてもらうと安心です。
次に、「どこまでの精度で測るか」を確認します。最小目盛りま
ででよいのか、さらにもう一桁、目分量で読み取るのか、といっ
たことです。
さらに、「ひとつのサンプルについて何反復測るのか」。通常、
統計処理をするために、複数回測定をすることになります。この
とき、異常なものは省くのか、それとも異常に見えるものも含め
て、全くランダムに選ぶのかも確認します。
サンプルが種子などの場合、コンタミ(混入)が怖いので、測定
のために取り出したものは「袋に戻さずに捨てる」のが基本です
が、「貴重なものなので捨てずに戻す」場合もあります。この点
も、確認しておきます。
ここまで確認したら、野帳(手書きでデータを記入する用紙)に
記入欄を作成します。測定しながら記入していくので、見やすく、
ミスが起こりにくいように欄は大きめに。サンプルの切り替わり
がわかりやすいよう、太線や赤線を引くなど工夫しておきます。
サンプルの選定基準と測定方法をきっちり決めておくことは、複
数の人が測定に関わる場合や、ひとりでやるにしても複数日かか
る場合に、特に重要になってきます。
以上の準備が終わったら、だいたいの所要時間が見積もれます。
勤務時間中に終われるかどうか、2日以上かかりそうなら切りの
良いところはどこかもざっくり考えておきます。
そしていよいよ測定開始。
測定値は間違いのないように読み取り、欄のずれがないように記
入します。測定者と記入者を分担する場合には、記入者は復唱し、
測定者はそれを聞いて確認しながら行います。
後でパソコンに入力することになるので、野帳とはいえ、誰にも
判読できるよう丁寧に書きます。
データ取りで大切なことは、「途中でやり方を変えない」という
こと。はじめから終わりまで、同じやり方で、同じルールで、測
定します。途中で「こうした方がいいかな?」と思っても、変え
てはだめです。変えるときは、最初からデータを取り直しです。
データ取りとセットの作業となる、パソコン(エクセルなどの表
計算ソフト)への入力するときの注意点としては、視線が野帳と
画面とキーボードを行ったり来たりしているうちに欄がずれるこ
とがあるので、数行おきに確認しながら作業します。
また、パソコンは不意にフリーズ(動かなくなる)し、作業中の
データが消えることがありますから、随時「保存」しながら進め
るのが安心です。保存時のファイル名は、後から変えることもで
きます。
入力終了後には、再度、野帳とつき合わせて確認し、間違いがな
ければ保存して終了!です。
研究者さんは、取れたデータを信じて次に進みますから、一見、
単純な作業に見えても、実験補助者さんの責任は重大なんです。
誇りを持って、きっちりデータを出して欲しいと思っています。
■ リーゾからのお知らせ ━━━━━・・・・・・・‥‥………
○実験補助セミナー 新規受講生募集しています(残席1)
2018年5月にスタートします。定員4名、セミプライベート型
の小さなセミナーで、研究機関への就職をサポートします。
残席1となりました。お申込はお早めに。
http://www.rizo.co.jp/seminer.html
○美食同玄米 甘酒用「わけあり」(大ヒット中!)
籾摺り後、選別機の篩の目を通り抜けてしまった、ちょっとスリム
な美食同玄米を、スーパーヘルシーな玄米甘酒を作るのにおすすめ
の「わけあり」としてお安く提供しております。
販売場所:イオンモールつくば内 えるふ農国
価格:600グラム(甘酒3回分)で 324円(税込)
市販の米麹(えるふでも売っています)を使って、まるであんこ!
のような食感と甘さの、美食同玄米甘酒が簡単にできます。レシピ
つきです。
アマゾンでも買えます。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07B8CMDC1
■ 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━・・・・‥‥‥……
○震災直後から始めた「すいすい通信」、まさかの8年目です。こ
れまで1回も休刊なしでやってきたことに自分でも驚いています。
雑文な上に長文のメルマガを毎号読んでくださっている読者の皆様、
ほんとうに感謝です。とりあえずもう1年、おつきあいください♪
○昔の職場の後輩である女性研究者が4月からリーゾに加わってく
れました。4年前に亡くなった創業パートナーの後任がようやく見
つかり、研究お手伝い業を大幅にパワーアップできそうです。どう
ぞよろしくお願いします。
○リーゾが入っている建物は、区分所有のテナントビルです。いろ
いろあって不動産屋が管理を下りたため、所有者で管理組合を作り、
なりゆきで理事になり、奮闘中です。問題山積みで大変ですが、ビ
ルの管理は知らないことが多く、へえ〜!の毎日。楽しまないと損
だなと思ってやってます。メルマガネタになる日をお楽しみに。
○最後までお読みいただき、ありがとうございました。これからも
リーゾとすいすい通信をどうぞよろしくお願いいたします。
すいすい通信は、「株式会社リーゾ」のお客様、および関係者の皆
様にお送りしています。この号は824名様に配信しました。
お知り合いで、「すいすい通信」の配信を承認していただける方が
いらっしゃいましたら、ぜひご紹介くださいますよう、お願いいた
します。
配信登録はこちらからできます。
http://rizo.sakura.ne.jp/vd/entry/e/bS8PtaC5kPRXp3iy/
【すいすい通信】
発 行 日:月1回・第1水曜日(予定)
発行開始日:2011年4月7日
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【発行元】
株式会社リーゾ
〒305-0005 茨城県つくば市天久保2-9-2-B201
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